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「揺れる日米安保・上」 日経新聞 09年12月15日 朝刊

米軍普天間基地問題が日米関係を揺るがしている。日本の国益にとって、日米同盟とは何なのか。安保条約の改定50周年を来年に控えて、今回の対立はそんな問いを日米双方に突き付けている。

「鳩山さんの根っこには今でも、『常時駐留なき日米安保』の発想があるようだ」。普天間問題の早期決着に動こうとしない鳩山由紀夫首相の胸中について、首相に接した関係者の一人はこんな印象を受けたという。

事態がこじれている大きな原因には、連立を組む社民党が現行の県内移設案に猛反対していることがある。だが、首相と話す機会がある政府・民主党幹部からも「首相には米国の軍事力によって日本の安全を守っていくという思いが強くない」との声が漏れてくる。

鳩山氏は旧民主党の代表だった1990年代後半に「常時駐留なき日米安保」と銘打った政策構想を掲げた。米軍が日本に常駐しなくても、危機が起きたときに駆けつけてもらえれば国防は成り立つという考え方だ。

党幹事長だった2月には、ミサイル防衛網が完備すれば「必ずしも米国の力に頼らなくても、専守防衛の中で日本の安全を保てる」と指摘した。

現在の安保体制は米国が日本を防衛する義務を負うのに、日本は米国に同様の義務を持たない片務型。米軍の常時駐留なしで日本はどこまで安全を確保できるのか。

著名な軍略家であり、87歳でなお現役のアンドリュー・マーシャル米国防総省相対評価局長は今春、研究者らを動員して「日本の将来の防衛体制」という内部分析書をひそかにまとめた。日本の国力や人口動態、世論などを調べ上げ、約20年後にどのような選択肢があるかを研究した。

内容は非公表だが、作成に携わった関係者によると「やはり、日本にとって日米同盟に勝る選択肢はない」との結論が出た。日本では深刻な少子高齢化や財政赤字が続き、日米同盟なしでは中国軍の台頭などに対抗するのは難しいという予測である。

米軍は冷戦後も日本内の基地に強力な戦力を維持してきた。嘉手納(沖縄)にF15戦闘機約50機、三沢(青森)にF16戦闘機約40機を配備。沖縄には海兵隊約1万8000人が駐留しているほか、第7艦隊が空母1隻とイージス艦9隻を含めた艦船17隻を日本に展開している。背景にあるのが、中国軍の増強と核開発に走る北朝鮮の存在だ。

このうち海兵隊は台湾や朝鮮半島の危機を想定した即応部隊とされる。だが、「海兵隊が日本から去れば、半島・台湾危機が周辺に飛び火するのを抑えづらくなり、尖閣諸島で紛争が起きても即応できなくなる危険が増す」(安保当局者)。

それでも日本が自力防衛の比率を高めるなら、まず巨額の防衛予算が欠かせない。日本の防衛予算は約4兆7000億円で、国内総生産(GDP)比0.9%強。世界の上位100位にも入らない。

では、他の米国の同盟国はどうか。米中央情報局(CIA)の資料によると、韓国の国防費はGDP比で2.7%、英国、オーストラリアは共に2.4%だ。

日本が韓国並になろうとすれば、防衛予算を約14兆1000億円に増やす必要がある。これは政府の一般歳出に占める社会保障関連費の6割弱に当たる。日本が防衛予算を急増すれば中韓などが反発する可能性もある。

運用面の壁はもっと厚い。海上自衛隊の体制は米海軍と一緒に行動することが前提だ。装備は米側が手薄な対潜活動や機雷除去が中心で「大規模な有事において米軍から離れ、単独で戦えるようにはなっていない」(海自幹部)。ミサイル防衛システムも情報は米偵察衛星に頼っている。

国防を米国に依存し、「軽武装」で経済大国になった日本。この構図を変えるのなら膨大な費用とリスクを覚悟しなければならない。防衛大綱の策定を来年に先送りする鳩山政権。骨太な安保論議を素通りしたまま、同盟がきしんでいる。(編集委員 秋田宏之)

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