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2013年8月

慰安婦像 沈黙は後退 ワシントン・古森義久

米国グレンデール市での慰安婦像の設置は日本の将来に禍根を残す出来事である。だがその過程では、米国を舞台とする慰安婦問題論議で地元の日本人社会の反対が初めて全米に知られることとなった。草の根で初めて表明された強い反対は、近くの市での同種の動きにすでに影響を及ぼし始めたようだ。

 グレンデールでは7月9日の市議会の公聴会で、証人27人のうち20人までが像の設置に明確な反対を述べた。大多数は同市内外に住む日本人男女だった。傍聴まで含むと同公聴会への参加は総数100人ほどだったが、うち7割が日本側で、反対の意を議事の合間にも明示したという。

 韓国や中国の意を体する勢力が超大国を利用して日本を攻めるという構図の米国での慰安婦問題は、河野談話の出た翌年の1994年ごろから始まった。米国の司法、行政、立法からメディア、学界までに働きかけた韓中ロビーは2007年、下院での日本非難決議を採択させた。最近は州や市のレベルでの決議や像設置を狙っている。

 20年もの対日糾弾工作に対し、米国の公式の場で日本側が反論や反撃したことはまず皆無だった。グレンデール市での証言がその記録を破ったことになる。

 この公聴会のすべてを傍聴した現地在住の今森貞夫氏が報告する。

「日本人証人たちは韓国側の慰安婦を性的奴隷と決め、日本の謝罪も賠償もすんでいないとする主張に対し、商業的な売春であり、国家間の清算がすんでいることを中心に反論しました。外国政府間の案件に米国の地方都市が関与することの不当性も強調しました」

 在米26年、経営コンサルタントの今森氏によると、証言した日本人はみな地元の米国社会のメンバーであり、大多数が永住権を持つ。ただし米国生まれの日系米人はいない。日本の政府はもちろん大企業の駐在員も留学生もおらず、文字どおり米国社会に根を下ろした日本人たちなのだという。

 

 公聴会後の市議の表決では慰安婦像設置が決まったが、日本人の証言は米メディアで幅広く報じられた。

 

 「反対派の証人は、慰安婦たちが志願した売春婦であり、性的奴隷ではなかったと述べた」(NBCテレビ)

 

 「証人の一人は日本軍が女性を強制連行したことはなく、米国の市が日韓問題にかかわるべきでないと主張した」(ロサンゼルス・タイムズ)

 

 「日本人の女性証人からは碑の設置は戦時の憎しみをあおりたて、子供たちに悪影響を残すだけだとの意見が出た」(NPRラジオ)

とくに地元の日系社会で読まれている「羅府新報」英語版は日本側の証人たちの名前をあげて、主張を詳しく紹介した。だが各メディアがみな報じたのは証人たちのリーダー格の目良浩一氏(元ハーバード大学助教授)の発言だった。「韓国側の慰安婦についての主張は捏造(ねつぞう)だ」とする同氏の証言はニュースの一部として幅広く報道された。

 グレンデールでの動きは近くのブエナパーク市で2週間後に開かれた同種の公聴会にも余波を広げた。同市でも韓国系勢力が慰安婦碑の設置を目指しているが、こちらの公聴会ではグレンデールでの激しい反対意見が提起され、審議にあたる市会議員5人のうち3人が設置反対に傾いてしまったというのだ。

 

 やはり米国での発言は欠かせない。黙っていれば、後退があるだけなのだ。(ワシントン駐在客員特派員)

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